遊戯療法の記録は、事実として観察した内容と、支援者の見立て・対応・次回の方針を分けて書くことが基本です。記録に入れる項目、主観を避ける表現、守秘や電子記録を選ぶ際の確認点まで、実務で使いやすい流れで整理します。
遊戯療法の記録は、観察した事実と支援者の見立て・次回方針を分けて残すことが基本です。日時や遊びの内容だけでなく、子どもの発言、支援者の応答、継続して見たい点をつなげると、支援の経過を追いやすくなります。
記録様式は、手書き・共有ファイル・電子記録システムのどれが優れているかではなく、共有する人数、アクセス権限、検索の必要性、日々の運用負担で選ぶのが現実的です。実習中や少人数の支援では簡潔なテンプレートが役立ち、複数職種で扱うケースでは権限管理や保管体制の確認が重要になります。
一方で、記録は診断や性格評価を断定するための文章ではありません。見たこと・聞いたことと、その時点での仮説を混同しない書き方を意識すると、共有時の誤解を減らしやすくなります。
ひと目でわかる
- 遊戯療法の記録は、観察事実・子どもの発言・支援者の対応・見立て・次回方針を分けて書くと整理しやすくなります。
- 最低限、日時、場所、参加者、実施時間、遊びや教材、支援者の関わりを残すと経過を追いやすくなります。
- 記録の共有や電子化では、閲覧権限・保管場所・持ち出しルールを勤務先の規程に沿って確認します。
| 確認する軸 | 記録で見るポイント | 選び方の目安 |
|---|---|---|
| 内容の整理 | 事実、引用、解釈、方針が混ざっていないか | 項目が固定された記録テンプレートを使う |
| 共有の必要性 | 誰が確認し、どこまで情報を扱うか | チームなら閲覧権限と共有範囲を確認する |
| 検索性 | 過去の経過、発言、支援方針を振り返れるか | 件数や共有者が増えるなら電子記録も検討する |
| 保管と運用 | 保管場所、バックアップ、持ち出しの扱い | 勤務先規程・契約内容に合う方法を選ぶ |
遊戯療法の記録で最初に押さえるべき結論
記録の目的は、セッションで起きたことを後から再現し、支援の連続性を保つことです。そのためには、印象だけで終わらせず、何が起きたかとそれをどう受け止め、次に何を確認するかを分けます。
記録は「観察した事実」と「支援者の見立て」を分ける
観察事実には、子どもが選んだ遊び、発言、表情、動き、支援者への働きかけなどを記します。見立てには、それらをもとに支援者が考えた仮説や、今後も観察したい点を書きます。
たとえば、「子どもは不安が強い」と書くよりも、「入室後、棚の前で複数のおもちゃに手を伸ばした後、手を引っ込める動きを繰り返した」と事実を記し、その後に「選択場面でのためらいについて、次回以降も様子を確認する」と分けるほうが、読み手に伝わる情報が明確です。
引用部分と支援者による要約も区別します。子どもの言葉を残す必要がある場合は、引用符などで逐語部分を示し、要約や解釈と混ざらないようにします。
最低限そろえたい基本項目
毎回の記録では、細部を長く書く前に、経過を追うための土台をそろえます。記録テンプレートには、次の項目を置くと実務で確認しやすくなります。
- 日時、場所、参加者、実施時間
- 実施条件や同席の有無
- 用いた遊び・教材・活動の流れ
- 子どもの発言、行動、表情などの観察
- 支援者の応答や関わり
- 見立て、継続観察する点、次回方針
すべてを同じ密度で書く必要はありません。ただし、今回の目標と関わる出来事、次回につながる反応は、短くても残しておくとケースの連続性を保ちやすくなります。
その日のうちに短く残し、後で整理する方法
記録を後回しにすると、発言の順序や支援者の応答が曖昧になりやすいものです。まずは実施後に、事実を中心としたメモを短く残します。その後、必要に応じて見立てや次回方針を加える流れにすると、事実と解釈を分けやすくなります。
急いでいるときは、「遊び」「発言・行動」「支援者の対応」「次回確認」の4欄だけでも構いません。重要なのは、後から読んだときに、推測なのか観察なのかがわかることです。
記録様式を選ぶ基準|手書き・共有ファイル・電子記録の違い
記録方法は、現場の規模や情報共有のあり方で変わります。導入時には、使いやすさだけでなく、アクセス管理、検索性、保管体制、運用を続けられるかを確認します。
少人数での運用に向く簡潔な記録様式
個人で記録を扱う場面や、共有範囲が限定される場面では、手書きや簡潔な記録テンプレートが使いやすいことがあります。記入欄が多すぎると、記録そのものが負担になり、重要な観察が抜けることもあります。
ただし、手書きであっても保管場所や持ち出しルールは必要です。個人情報やセンシティブな内容を含みうるため、「手元に置くから安全」とは限りません。
チーム共有で確認したい検索性とアクセス権限
複数の支援者が関わる場合、共有ファイルや支援記録システムは、過去の経過を確認しやすい点が利点になります。一方で、誰でも閲覧・編集できる状態では、情報の取り扱いに課題が生じる可能性があります。
共有を検討する際は、閲覧できる人、編集できる人、共有する範囲、記録の更新方法を先に決めます。特に、学校・福祉・医療など関係機関が関わるケースでは、必要な情報と共有してよい情報を同じものとして扱わない姿勢が重要です。
電子記録システムを比較するときの費用・機能・保管体制
電子カルテや支援記録システムを検討する場合は、単に入力画面の見やすさだけで決めないほうが安心です。記録テンプレートの設定、検索のしやすさ、アクセス権限、バックアップの考え方、導入後の運用支援などを確認します。
料金、セキュリティ仕様、導入サポートの内容はシステムごとに異なります。比較する際は、公式案内や契約条件で、勤務先の規程に合う保管・運用が可能かを確認してください。
実務で使える記入の流れ|観察から次回方針まで
記録は、文章力よりも順序が大切です。実施条件から始めて、観察、支援者の対応、見立て、次回方針へと並べると、読み返したときの判断がしやすくなります。
実施条件と遊びの内容を客観的に記す
最初に、日時、場所、参加者、実施時間を記します。そのうえで、子どもが選んだ遊びや教材、遊びの移り変わり、活動の順序を簡潔に残します。
ここでは、「楽しそうに遊んだ」といった評価より、「人形を並べた後、箱に入れ、再び取り出す遊びを続けた」のように、見聞きできたことを中心に書きます。遊びの意味をすぐに決める必要はありません。
発言・表情・行動を評価語なしで記録する
子どもの発言は、支援の流れを理解するうえで重要な場合に逐語的に残します。引用した言葉と、支援者が要約した内容は分けて書きましょう。
表情や行動も、できるだけ具体的に記します。「機嫌が悪い」ではなく、「質問に対して返答せず、視線を床に向けた状態が続いた」のようにすると、ほかの支援者も同じ情報として受け取りやすくなります。
支援者の応答、見立て、次回の観察点を書く
支援者が何を言ったか、どのような環境設定をしたかも、必要な範囲で残します。次に、その応答に対する子どもの反応を書き、最後に見立てと次回方針を置くと流れが整います。
次回方針は、「様子を見る」だけで終わらせず、今回の目標・反応・継続して観察したい点と結び付けます。たとえば、「選択場面での反応を引き続き観察し、本人が遊びを選ぶまでの関わり方を検討する」と書くと、次回の焦点が共有しやすくなります。
記録の質を下げやすい注意点と修正例

記録のわかりにくさは、情報量の少なさだけで起きるものではありません。曖昧な評価語、断定、必要以上の個人情報は、記録の利用しにくさや共有上の誤解につながります。
「落ち着きがない」など曖昧な表現を具体化する
「落ち着きがない」「反抗的」「協力的ではない」といった言葉は、書き手の印象が強くなりがちです。何を根拠にそう感じたのかがわかるよう、行動や発言に置き換えます。
- 曖昧な表現:落ち着きがなかった
- 具体的な記録:室内を移動しながら複数の玩具に触れ、ひとつの遊びに戻る動きがみられた
具体化は、子どもを評価するためではなく、次回の支援者が場面を把握するために行います。
診断や原因を断定しない
遊びや発言には複数の意味づけがありえます。記録上では、「この遊びは必ず何を意味する」と決めつけたり、行動から診断や原因を断定したりしないよう注意します。
見立てを書く場合も、「~の可能性を含めて確認する」「~という仮説を置き、今後の反応を見る」のように、観察の継続が必要な内容として整理するとよいでしょう。個別ケースの心理的意味づけや治療効果の判断は、記録だけで確定できるものではありません。
個人情報を書きすぎない・共有しすぎない
記録には、支援上必要な情報を残します。一方で、共有目的と関係のない詳細や、センシティブな内容を過剰に記すと、情報を扱う範囲が広がります。
保管場所、閲覧権限、持ち出し、情報共有の範囲は、勤務先の規程や関係する制度、契約内容に従ってください。電子記録、共有ファイル、紙媒体のいずれでも、この確認は欠かせません。
場面別に変わる記録のポイント
同じ遊戯療法の記録でも、誰が同席し、誰と連携するかによって、残す内容と共有の考え方は変わります。セッション内の出来事と、連携に必要な要点を分けて考えることが大切です。
子どもと支援者の個別セッション
個別セッションでは、子どもの遊びの流れ、発言、支援者への反応、支援者の応答を中心に記録します。特に、前回からの変化を無理に評価するよりも、今回に見られた事実と、継続して見たい点をつなげることが役立ちます。
保護者同席・保護者面談を含む場合
保護者が同席した場合は、子どもの様子だけでなく、同席という条件のもとで何が起きたかを整理します。保護者面談の内容を含める際も、子どものセッション記録と保護者からの情報、支援者の応答を混同しないようにします。
記録を共有する可能性がある場合は、誰の発言か、どの場面の内容かがわかる書き方を意識すると、誤解を減らしやすくなります。
学校・福祉・医療など関係機関と連携する場合
関係機関との連携では、セッション記録の全文を共有する前提ではなく、支援目的に照らして必要な情報を整理します。共有先、共有する内容、共有の方法は、勤務先の規程や個別の取り決めに沿って確認が必要です。
連携用の記録では、遊びの細かな描写よりも、支援上の経過、現在の観察点、関係者間で確認したい事項を分けてまとめる方法もあります。
選択基準と比較のまとめ
続けられる記録運用を選ぶには、次の点を確認します。記録テンプレートの項目が現場に合っているか、共有者に応じたアクセス権限を設定できるか、過去の記録を検索・振り返りできるか、バックアップや保管体制が勤務先の規程に沿っているか、そして記録の書き方を相談できる研修やスーパービジョンがあるかです。
少人数で記録の目的が明確なら、簡潔なテンプレートから整える方法があります。複数職種での共有、ケース数の増加、検索や権限管理の必要性が高まったときは、電子カルテや支援記録システムも比較対象になります。
電子記録システムや記録テンプレートを選ぶ際は、公式案内や詳細条件で、権限設定・保管方法・運用支援を確認してください。
まとめ
遊戯療法の記録では、観察事実と見立てを分けるだけで、情報の読みやすさが大きく変わります。毎回すべてを長文で残すより、実施条件、遊び、発言・行動、支援者の対応、次回方針を一定の順序で記すことが実用的です。
記録様式は、現場の人数や連携のあり方に合わせて選びます。紙か電子かにかかわらず、守秘、閲覧権限、保管場所を確認し、無理なく続く運用に整えることが大切です。
知っておくと役立つ情報
記録を見直すときは、次の点を簡単にチェックすると役立ちます。
- 観察事実と見立てが同じ文に混ざっていないか
- 子どもの逐語と支援者の要約が区別されているか
- 支援者の対応と、その後の反応がつながっているか
- 次回方針が今回の目標や観察点に結び付いているか
- 共有する必要のない個人情報まで記載していないか
重要事項の整理
記録様式、保存期間、閲覧権限、情報共有の範囲は、勤務先の規程や関係する制度、契約内容によって異なります。具体的な保存期間や権限設定を一般論だけで決めず、所属先のルールを確認してください。また、遊びや行動の心理的意味づけ、診断、治療効果は、記録の一部だけで断定できるものではありません。
よくある質問
Q1. 遊戯療法の記録には、毎回どこまで詳しく書くべきですか?
A1. 日時、場所、参加者、実施時間、遊びや教材、子どもの発言・行動、支援者の対応、次回方針は、経過を追うために整理しておくと役立ちます。すべてを詳細に書くより、今回の目標に関わる事実と、次回も確認したい点を優先すると記録を続けやすくなります。
Q2. 記録テンプレートは手書きと電子記録のどちらがおすすめですか?
A2. 少人数で簡潔に運用するなら手書きや基本的なテンプレートが合う場合があります。チーム共有、検索、アクセス権限の管理が必要なら、共有ファイルや電子記録システムを検討する方法があります。保管場所、閲覧権限、バックアップなどを勤務先の規程に沿って確認して選びます。
Q3. 遊戯療法の記録を他職種や保護者と共有するとき、何に注意すればよいですか?
A3. 共有する目的を明確にし、必要な情報の範囲を整理することが重要です。セッション内の詳細をそのまま広く共有するのではなく、支援上必要な経過や確認事項を分けて検討します。情報共有の範囲や方法は、勤務先の規程、関係する制度、契約内容に従ってください。





